DXソリューション事例集

三島市役所 都市基盤部下水道課経営係

市民の力とDXでマンホール老朽化問題を解決

三島市役所 都市基盤部下水道課経営係

  • 分野:社会インフラ
  • キーワード:クラウド

スマートフォンで稼働するゲーム「鉄とコンクリートの守り人」を使い、静岡県三島市は2022年、マンホール蓋の写真を市民に撮影・投稿してもらうイベントを開催。
開催2日目にして市内すべてのマンホール蓋の撮影と状況報告が得られた。市民参加型ゲームを用いたことで、インフラ保守にかかる費用と時間が大幅に軽減されている。

人口約10万7千人をかかえる静岡県三島市には、約13000基の下水道マンホールが設置されています。三島市役所都市基盤部下水道課ではこれまで、すべてのマンホールを人手によって1年をかけて巡視点検してきました。損傷など修繕を要する状況が見つかり交換に至るマンホールは年間50個から100個ほど。点検作業は限界に達しています。市民の力とDXを用いて、この巡視点検が瞬時に完了するイベントが開催されました。

【課題と経緯】4名で13000基のマンホール巡視点検継続は容易ではない

三島市役所都市基盤部下水道課(以下、三島市下水道課)によると、同課が管理する約13000基のマンホールのうち、半数弱が昭和40年代から50年代にかけて設置されたもので、その多くで劣化が進行しています。その結果、ひび、欠け、すり減り、マンホール周辺舗装の損傷など、事故の原因となりうる損傷が発生していますが、全体像を把握することは容易ではありません。三島市下水道課ではマンホールの巡視点検は外部に委託し、現在はたった4名の従事者によって行われています。人口と税収が減少する中で、下水道の維持管理にかかる費用負担はきびしい状況が続いていました。
マンホール蓋などを製造する日本鋳鉄管株式会社と、市民参画型の環境インフラ情報プラットフォームの構築を行うNPOであるWhole Earth Foundation(ホール・アース・ファウンデーション)とが共同で開発したアプリ「鉄とコンクリートの守り人(以下、鉄コン)」は、スマートフォンを使ってマンホールを撮影し、破損状態などのレビューとともに送信することができるよう製作されたゲームアプリです。三島市下水道課は鉄コンを開発した2社とともに、この鉄コンを用い、市民が参加するイベント「マンホール聖戦 in 三島」を企画・開催しました。

▲三島市役所下水道課が市役所ウェブサイトに公開したマンホールマップ。灰色の丸が下水道マンホール
▲三島市役所下水道課が市役所ウェブサイトに公開したマンホールマップ。灰色の丸が下水道マンホール

【ソリューション】市民がゲームアプリを介してマンホール巡視点検に参加

鉄コンの使い方は極めてシンプルなものです。メールアドレスを登録した参加者は、三島市下水道課があらかじめマンホールの位置情報をマッピングした地図をもとに、まだ撮影されていないマンホールを探し、周囲の風景とマンホールそのものを撮影・投稿します。投稿時に、ひび割れやすり減りなど、損傷具合を付記して送信することも可能です。各参加者はマンホールの写真投稿数で競い合い、上位入賞者には賞品が用意されました。
開催期間は2022年3月19日から24日にかけての6日間でしたが、三島市下水道課が事前に対象としたマンホール約10000基が開催2日目に投稿完了となり、急遽、3月21日に消火栓マンホールのデータを追加。登録申込者数は615名、延べ参加者数は400名、累計投稿数は19542枚に登り、三島市のマンホール聖戦は盛況のうちにコンプリートされることとなりました。

画像の左から順に▲鉄コンの地図上には、投稿済みと未投稿のマンホールが色分けされて表示される▲参加者は、周辺の状況がわかる写真と、マンホールそのものを近接撮影した写真を投稿する▲損傷に関する情報は、タグ情報として追記できる
画像左から順に
▲鉄コンの地図上には、投稿済みと未投稿のマンホールが色分けされて表示される
▲参加者は、周辺の状況がわかる写真と、マンホールそのものを近接撮影した写真を投稿する
▲損傷に関する情報は、タグ情報として追記できる

【効果と展望】巡視点検以外にもあった、下水道課が期待していたこと

実は、三島市下水道課がこのイベントに最も期待していたことは、巡視点検にかかる費用軽減や期間短縮ではありませんでした。
かねてから、三島市下水道課では、下水道事業が市民に十分に理解されていないことを憂慮してきました。同課によると、紙おむつや油など、水で分解されない異物が下水道に流されることで、ポンプ施設の緊急停止が多発しているとのこと。下水道の役割と機能について理解が進んでいるならば、異物が混入することなく、汚水は適正に排出されるはずです。
適正に使用していても、下水道の維持管理には費用がかかります。「下水道は重要なインフラであること」「下水道維持にかかる費用は受益者負担の原則のもとにあること」「インフラの維持管理には、住民の力と協力が必須であること」を、三島市民になんとか伝えたいとの思いが、この「マンホール聖戦 in 三島」には込められていたのです。

▲マンホール聖戦開催に向けて準備を進める担当者
▲マンホール聖戦開催に向けて準備を進める担当者

三島市では下水道事業のPRに向けて、三島市下水道課に加え、関係部署が総出でマンホール聖戦に挑みました。共催者となった三島市観光協会は、地域産品やホテルの宿泊ペアチケットなど、豪華な賞品を用意。また、後援をした三島市教育委員会はチラシを配布し、授業で使用するタブレットでイベントに参加できるよう環境を整備しました。イベント初日には、下水の最終処理を担う三島市浄化センターが、浄化センター特別見学会を開催。さらには、三島市健幸政策戦略室が、8000歩以上歩いた参加者に、抽選で地域産品をプレゼントするウォーキングイベントを実施します。三島市のもてるリソースをフル稼働した「聖戦」でした。
約10000基のマンホールがたった2日でコンプリートされるという大成功に加え、下水道事業のPR面でも、大成功を遂げたイベントとなりました。約2割の参加者が、三島市外からの参加者でした。浄化センター特別見学会の募集は早々に定員に達し、テレビ局、新聞社、ネットニュースなど、19の報道機関がマンホール聖戦を伝えました。
三島市における導入事例は、DXが、おまかせにしてしまいがちな行政を「自分ごと」としてとらえるきっかけを生み出した一例と言えるのかもしれません。