DXソリューション事例集

株式会社デ・リーフデ北上

農業データの統合と見える化で多種多様な人材確保とブランド化を目指す

株式会社デ・リーフデ北上

  • 分野:農業・林業・水産業
  • キーワード:AI/データ分析/画像解析

農業最先端であるオランダ式栽培法を取り入れ、石巻市北上町で再生可能なエネルギーを使用したトマトとパプリカの一貫生産、販売を行う。2021年5月には2工場目のデ・リーフデ大川を増設。創業わずか5年ながら、面積当たりの生産量は全国トップクラスを誇る。

JR石巻駅から車で約40分の北上町に、トマトとパプリカを栽培・販売する施設『デ・リーフデ北上』があります。デ・リーフデとは、オランダ語で「慈愛」。愛を持って野菜を育てるという意味で名付けられました。

デジタル化により自動で環境をコントロールし、甘くておいしい野菜の収穫を1年中、可能にするなど先進的な栽培法が話題に。そして現在はDXを用いて、農業全体が長きに渡り抱え続ける大きな課題の解決にも挑戦しています。

【課題】農業のネガティブなイメージ、人材不足を解消したい

東日本大震災で被災した地元を良くしたいと、石巻市北上町に集まった有志が農業を始めようと決意。2016年9月、農業先進国であるオランダ式栽培法を取り入れ、再生可能エネルギーを使用した持続可能な次世代型農業をスタートさせました。

天井高が約6mもある特徴的な建物はオランダ型ガラスハウスと呼ばれ、屋内外に設置されたセンサーが温度や日照などの必要なデータを感知。コンピュータが天井のガラス屋根を自動で開閉し、栽培する品種ごとに最適な環境をコントロールしています。

その結果、植物の成長に欠かせない光合成が最大化し、甘味の強いおいしいトマトやパプリカを一年中、収穫できるようになりました。

北上川沿いの広大な敷地に建設された特徴的なガラスハウス
▲北上川沿いの広大な敷地に建設された特徴的なガラスハウス
日本で通常の栽培法だと年に2~3カ月しか収穫できないトマトやパプリカ。コンピュータ制御のオランダ式なら、一年中可能になる
▲日本で通常の栽培法だと年に2~3カ月しか収穫できないトマトやパプリカ。コンピュータ制御のオランダ式なら、一年中可能になる

そんな最新鋭の施設を持つ『デ・リーフデ北上』にも、創業当初から課題がありました。それは、多くの一次産業の現場で悩みの種となっている担い手不足の問題です。特に北上町のような過疎地域では、震災前から人口減少、少子高齢化の影響が色濃く、事業を継続していくには安定した人材確保が欠かせませんでした。

そこで『デ・リーフデ北上』では、まずは3Kと言われる農業のネガティブなイメージを払拭し、一人でも多くの人に農業を目指してもらいたいと、職場環境の改善やスマート農業の導入に着手。さらには国や県と一緒に「データ統合プラットフォーム」の構築というDXの取り組みを始めました。

【ソリューション】すべてのデータを集積して「見える化」するプラットフォームの導入

これまでも、栽培に必要なデータは一日の終わりに日報を書いたり、エクセルに打ち込むなどして、個別にとってきました。しかし、最終的にこれらをとりまとめるのも「人」。そのためすべてのデータをうまく活用できず、結局は「経験や勘」に頼ることが多かったのです。

そこを『デ・リーフデ北上』では、環境データ、作業データ、生育データ、選別データのすべてを自動で集積し、まとめる「データ統合プラットフォーム」を採用。

全員が「アグリOS」と呼ばれる機能を搭載したスマートフォンのような機材を携帯して勤務することで、誰が、どのタイミングで、どんな作業を行ったかなど、栽培や品質向上に役立つデータを毎日リアルタイムに、全体で見えるようにする「栽培管理サポートシステム」を導入しました。

また、従来は人の手で行ってきた出荷時の「選別」についても、選果機を導入することで品種やサイズ、重量を自動で分別。出荷のスピードと効率をアップすることで、細かな顧客ニーズに対応する「協調出荷支援システム」を構築しています。

▲システムイメージ
▲データを入力すれば、それに合ったトマトやパプリカが自動で選別されてくる選別機
▲データを入力すれば、それに合ったトマトやパプリカが自動で選別されてくる選別機

【効果と展望】 多種多様な人材確保とブランド化を実現

環境、作業、生育という栽培に必要なデータを統合し、見える化する「栽培管理サポートシステム」は、個人の生産性を測る労務管理にも役立っています。そして今後は、より多くのデータを蓄積することで、その解析に基づいて生育や収穫量を予測、情報共有によって人の「経験や勘」までも見える化。未経験者でも早く同じ結果を出せるようになるなど、人材確保の促進につながることは間違いありません。

一方、出荷のスピードと効率を飛躍的に向上させた「協調出荷支援システム」は、それぞれで細かく異なる小売店へのニーズ対応を容易に。今までのように農協(JA)や市場などの中間業者に頼まなくても、産地から直接届けることが可能になります。

顧客と直接つながることができれば、今まで相場によって変動していた価格も生産者が自由に決めることができ、中間業者への手数料も省ける分、労働環境や条件を良くしていくことができるでしょう。ブランド化し、自社商品の価値を高めていくこともできるようになっていきます。

すでに、創業からわずか5年の『デ・リーフデ北上』では、50人の社員が勤務。しかも平均年齢は20代で、その全員が農業未経験からのスタートというから驚きます。

▲IT系や工学部出身の若者たちも多く活躍する
▲IT系や工学部出身の若者たちも多く活躍する

作業の効率化で、きつい、汚いといったネガティブなイメージを大幅に刷新し、農業を若者や未経験者でもやりたいと思える仕事に変革させるDX。

持続可能な農業の未来は、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。