アイデアの生み方・育て方

DXアイデアソンに学ぶアイデアの生み方・育て方

DXプロジェクトに応募してみたいけど、発想のしかたやまとめ方がわからない…。そんな皆さんの参考になればと、石巻市を拠点に活躍する若きプログラマー集団『株式会社イトナブ』のメンバーが、DXアイデアソンに挑戦してくれました。
「アイデア」と「マラソン」を掛け合わせた造語「アイデアソン」とは、短い期間内でグループに分かれてアイデアを出し合い、ブラッシュアップさせてその結果を競うという2000年頃から広まってきたアメリカ発祥のプログラム。
今回は、『みやぎをよくするDX』をテーマに、県民の皆さんの暮らしがよくなる、具現性の高いアイデアを目指し、熱い議論が交わされました。そこには、アイデアの生み方、育て方のヒントがいっぱい。みなさんもぜひ、参考にしてみてください!

身近な課題を思いつくまま、書き出してみる

STEP1.身近な課題を思いつくまま、書き出してみる

テーマは「みやぎをよくするDX」

テーマは『みやぎをよくするDX』。宮城県民の生活をよくするためのデジタル変革について、アイデアを出そうという企画です。
発想しやすいよう、8分野(防災・防犯、教育、子育て・医療・福祉、社会参画、農業・林業・水産業、観光・経済商工、環境・エネルギー、社会インフラ)に分け、参加者には好きな分野で課題に思っている事柄を複数、付箋に書き出してもらいました。みなさんも、身の周りの課題を思いつくまま、書き出してみましょう。

ファシリテーターを務める株式会社イトナブの古山代表からテーマ説明
▲ファシリテーターを務める株式会社イトナブの古山代表からテーマ説明
まずは10分間で、それぞれが思いつく課題をどんどん付箋に書いていきます
▲まずは10分間で、それぞれが思いつく課題をどんどん付箋に書いていきます

STEP2.事例を参考にDXの理解を深める

とはいえ、DXがどんなものなのか、まだピンと来ていない人も多いはず。そこで会場では、すでにDXを活用し、実際の現場でさまざまな課題解決に取り組んでいらっしゃるお二方のお話を伺うことにしました。

最初にご登壇いただいたのは、石巻市北上町でトマトとパプリカの大規模栽培を行う『デ・リーフデ北上』の阿部淳一さん。農業におけるDX活用について、大変興味深いお話を聞くことができました。

次は、NTTコミュニケーションズの担当者から、快適なDXを実現する話題の『5G』について解説がありました。さらに、その技術を実際の現場で活用しているという仙台育英高校陸上部の菅原新コーチがオンラインでご登壇。NTTコミュニケーションズが提供する『SwipeVideo』というソリューションを利用して、生徒たちが自分のフォームを確認する様子などを紹介してくださいました。

Point

<発想のポイント>
DXとIT化の違いを理解する

アナログ作業をデジタル化し、業務の効率化を図る『IT化』とは違い、DXとは業務や業務プロセス全体をデジタル化して、製品やサービス、ビジネスモデルなどの変革を進め、社会に新しい価値を提供するもの。「課題を根本から解決するためのデジタル活用」と考えれば、わかりやすいかもしれません。

STEP3.アイデアをテンプレートに書き出す

実際の事例で理解を深めた後は、さっそく自分たちでアイデア出しに挑戦!各自、選んだ分野と課題、デジタルを活用したその解決策について、10分間で短くテンプレートにまとめていきます。その後、一人ひとりが発表していきました。

「今回のテンプレート」

  • ①テーマ:選んだ分野
  • ②タイトル:課題解決の取り組みをひとことで表現
  • ③課題:解決したい身の回りの課題
  • ④解決法:デジタルを利用したその課題の解決法
公共交通機関が少ない、病院の待ち時間が長いなど、身近な暮らしの課題が出されると、周りからも「そうそう、それそれ!」と共感の声が挙がりました。
▲公共交通機関が少ない、病院の待ち時間が長いなど、身近な暮らしの課題が出されると、周りからも「そうそう、それそれ!」と共感の声が挙がりました。
Point

<発想のポイント>
最初は“ざっくりイメージ”でOK

この時点ではまだ、DXの仕組みを突き詰めて考える必要はなく、多くの人が困っているであろう課題を発掘し、その解決法のイメージを“ざっくり”とでもふくらませることが大切です。

STEP4.共感する案に「いいね!」を

全員の発表が終わると、今度は各自が「いいね!」と思った他者のアイデア2案を選び、「いいね!」ボタンを押す代わりに、シールを貼って投票します。
ちなみにここでの「いいね!」は、その課題を解決できれば社会的なインパクトが強く、また具現性も高いと思われるアイデアであり、何よりも共感できることが大切。その結果、以下の4案が選ばれました。

<選抜された4案>

Medicine Direct

A:分野/医療
タイトル/Medicine Direct

  • 課題/アレルギーなど持病のある人は、いつも病院で同じ薬をもらうだけで1~2分の診察のために2~3時間も待たされるのが無駄に感じる。
  • 解決法/処方箋を発行してもらい、外部の人に頼んで薬だけを配達してもらえる仕組みを作りたい。
共通予約プラットフォーム

B:分野/教育・福祉
タイトル/共通予約プラットフォーム

  • 課題/公民館や体育館、運動場などを借りたいと思っても、管理する自治体などによって予約システムがバラバラで、予約するのが面倒くさいと感じる。これで利用者が減るのはもったいない。
  • 解決法/共通のプラットフォームで自治体管理の体育館や運動場などの施設が予約できるシステムを作る。
地域対抗HPクオリティレベル対決

C:分野/地域活性
タイトル/地域対抗HPクオリティレベル対決

  • 課題/地方のお店や施設にはHPが無かったり、クオリティが低くかったり、更新されていないなどの課題がある。
  • 解決法/地域ごとに区分し、HPを申請すれば経験値がもらえるというシステムを導入。クオリティや更新頻度によって経験値が積み上がる仕組みで利用者への見える化を図り、同時に発信者のモチベーションもキープする。
保育所、幼稚園での子どもの活動管理アプリ

D:分野/子育て
タイトル/保育所、幼稚園での子どもの活動管理アプリ

  • 課題/子どもが食べたものや睡眠時間などを毎日、連絡帳で保育園と親がやりとりしなければならない。両者の負担がとても大きいと感じている。
  • 解決法/保育所が子どもの情報をデータでアップし、保護者がスマホなどで見られる仕組みを作る。また、子どもの成長記録をビッグデータ化すれば、子ども向けの製品などを作る企業にとっても、商品化のヒントになる。

<他にもこんなアイデアが出ました>

  • ●分野/観光

    課題/交通機関が少なく、車がないといけない観光スポットが多い。

    解決法/観光客に自転車を使ってもらい、頑張った分だけおいしいものが食べられるクーポンを配る。スマホアプリで観光案内もできるようにする。

  • ●分野/教育

    課題/自分はイベントの企画をすることが多いが、学生たちがどんなイベントを求めているのかわからない。

    解決法/学生のイベント参加率や実際にどのような内容のイベントが求められているのかをデータ化できる仕組みを作りたい。

  • ●分野/農業

    課題/実家の農家では、特に田んぼの水位の管理と調整に困っている。

    解決法/遠くの畑にいちいち見にいかなくてもデジタルで水位が把握でき、自動で適切な水分量に調整する仕組みを作りたい。

  • ●分野/観光

    課題/宮城には特に美味しいラーメン屋が多いと感じるが、実際にはあまり知られていない名店が多くてもったいない。

    解決法/スマホアプリでグランプリを開催、各店に参加してもらい、おいしさを見える化する。

  • ●分野/観光

    課題/旅行のプランを練るのが億劫だと感じる人も多い。

    解決法/当日の混み具合なども加味しながら、レコメンドツアーを提示してくれるアプリがあると良い。

  • ●分野/水産業

    課題/温暖化による海水温度上昇により、海の幸の不漁や値上がりなどが起こっている。

    解決法/水温がどれぐらい上がれば、どの魚種にどんな影響が出るのかなどがわかる仕組みを作り、漁業関係者や購入者が対応しやすくする。

  • ●分野/経済・商工

    課題/石巻のまちなかに多い個人商店。臨時休業の期間やお店の人が外出からいつ帰ってくるのかわからないなどの問題がある。
    そこで、店主が外出先からでも表示の内容を変えられるリモート掲示板を個人商店に設置したい。

    解決法/お店に、電子ペーパーのような掲示板をおいて、外出先からそこに表示する内容を変えられるようにする。

  • ●分野/生活・くらし

    課題/公共交通機関や施設、お店などの情報がわかりにくい。

    解決法/情報をひとつのアプリにまとめて、カテゴライズし、見やすくする。それを自治体ごとに作っておいて、住民にお知らせするサービスを作る。

  • ●分野/防犯

    課題/夜道に街灯が少なくて怖い。
    解決法/街灯が少ない地域の学校や家などに相談し、ソーラーパネルを設置。夜には自動的に灯りがともるシステムを作る。

  • ●分野/就職

    課題/地方には若者がやりたいと思う仕事が少ない。

    解決法/テレワークを一括で導入する地区を作り、地方にいながら都会の会社に就職できるような仕組みを作りたい。

  • ●分野/環境エネルギー

    課題/通勤時などいつも同じ時間に同じ道で渋滞が起こっている。

    解決法/混んでいる道やおすすめのう回路などをリアルタイムで知れるシステムを作る。さらに、利用者が時間の短縮に伴う排出ガスの減少に成功すると経験値が積み上がるようにし、ゲーム感覚で楽しめるようにする。

STEP5.アイデアをブラッシュアップする

選ばれた案の発案者を各グループのリーダーとして、他の人は自分も一緒に考えたいと思うアイデアのテーブルに移動し、4つのグループに分かれます。
その後は、50分間のブレストタイム。ひとつのアイデアをグループで、掘り下げてもらいます。
ポイントは、「誰に、何を、どうやって、そうしたらどうなる?を考えること。その結果、方向性やアイデア自体が変わってしまってもOK」とファシリテーターの古山さん。
みやぎDXプロジェクトにて、DXアイデアを出そうと考えているみなさんも、周りの人と意見交換をすることで、自分のアイデアをブラッシュアップしてみましょう。

アイデアをブラッシュアップする1
アイデアをブラッシュアップする2
アイデアをブラッシュアップする3
アイデアをブラッシュアップする4
Tips

<発想のヒント>
ターゲット像を具体的に考える

その課題を解決すれば、喜ぶ人ってどんな人?年齢層や性別、ライフスタイルなど、ターゲット像をより具体的に考えることで、よりピントのあった解決策を導き出すことができます。

STEP6.磨いたアイデアを発表・共有する

最後に、各グループがブラッシュアップしたアイデアを発表していきます。それぞれ一人から生まれたアイデアがグループワークを経て、どのように変貌したか、ぜひ注目してご覧ください。

Dグループの発表

Dグループの発表

分野/子育て
タイトル/きずなぐ

キッズ(子ども)といろんな人をつなぐ、という意味を込めて、サービスを「きずなぐ」と命名。
これにより、保育所と親の間で毎日交わされる連絡帳のペーパーレス化と企業などによる子どもの成長のビッグデータ活用を実現する。保育所から親に一括送信されてくる大量の写真の中から、我が子が写っているものだけをダウンロードする仕組みも作る。

Bグループの発表

Bグループの発表

分野/教育・福祉
タイトル/みやぎ型予約管理運営サービス(仮)

宮城県のバスや市役所窓口、体育館や公民館など県民が利用できるサービスの予約システムを考案。
シンプルな予約機能に加え、キャンセル待ちや問い合わせの機能も充実させる。現状は現金決済が多い使用料も、予約時に電子決済できるようにしたい。

Aグループの発表

Aグループの発表

分野/医療
タイトル/Medicine Direct

病院での長い待ち時間を解消するため、診断により、薬が長期的に変わらない人を対象に、処方箋や薬を配達するサービス。
患者側が項目ごとにチェックを付けるタイプの問診票に記入し、ネット診察で処方箋が出るようにする。

Cグループの発表

Cグループの発表

分野/地域活性
タイトル/HOPDATE

企業やお店などのWEBサイトの更新が見られるアプリ。
ターゲットは、サイトの更新をする企業やお店とサイトの更新を知りたい人の2者。まず前者には、古いHPをアップデートした分、ポイントを授与してモチベーションを保ってもらう。
後者には、そのポイントをランキング表示して、活発なWEBサイトや企業を知ってもらう仕組みを作る。

以上で、全4グループの発表が終了。いずれも、ワクワクするようなアイデアばかり、DXの可能性を身近に感じることができました。

さて、いかがでしたか?ここまで記事を読んでくださった皆さんの中でも、いろいろな可能性を秘めた素晴らしいアイデアが生まれてきていることでしょう。そんな方はぜひ下記から、アイデアを発表、共有してみてください。
これからアイデアを考えるという人も、他の人のアイデアを参考にし、「いいね!」をすることで、新たな発案の種が生まれるかもしれません。

3時間にも及ぶアイデアソンに参加してくれた株式会社イトナブの皆さん。
▲3時間にも及ぶアイデアソンに参加してくれた株式会社イトナブの皆さん。お疲れ様でした!